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 アルゼンチンから11泊のクルーズ

ジェンツーペンギンの営巣地へ。向こうに停泊しているのがORION
   
2004年2月、雑誌の企画で南極半島クルーズを同行取材。
その体験を思い出すまま綴ってみました。

南米アルゼンチンのウシュアイア港を起点に、南極半島と周辺の島々を巡る11泊のクルーズで、乗船したのは耐氷船ORION。
極地やガラパゴスなど秘境を巡る“探検客船”として新造された船で、快適性だけでなく、環境や生態系への影響に配慮した設備やルールも徹底されていました。
南極海の経験豊富なキャプテンの知識とコンパクトな作り(4050トン/キャビン数53室)を生かし、大充実&うれしいサプライズ満載のクルーズでした!
   
 クルーズ幕開けはシャクルトンの島

さすが世界最南の町ウシュアイア。ペンギンも歩いてる

夏には南極旅行者が多く集まるウシュアイア港

クルーズで最初に訪ねた(船上見学)エレファント島

目には見えないけれど氷河が崩落する低い音が聞こえる
  
成田→シカゴ→ブエノスアイレス→ウシュアイアと、2日間の空の旅でぐったり。
さらに約1000kmのドレーク海峡はしっかり船酔い。
夢にまで見た南極を前に、まさかのテンション急降下・・・。
が、出港から45時間後、永遠に続くと思われた水平線上に島影発見!
近づくと、濃紺の海からアルプス山脈がそそり立ったような圧倒的光景が迫り、しばしあ然。
エレファント島でした。

シャクルトンの探検記は読んでいたので、興奮も感動もひとしお。
ここから一気にテンションが上ります♪

そして、この日の夜遅く、空には見たこともないたくさんの星☆
海も穏やかで、窓に差し込む月明かりのもと、夢のような現実に酔いながら眠りにつきました。
   
 ロマンチックなアイスサウンド

最初に上陸したハーフムーン島にはヒゲペンギン

ニューマイヤー海峡。耳を澄ますと氷の会話が聞こえる
    
南極クルーズは天候に左右されることが多く、ルートも予定通りとはいきません。
でも小型船は小回りがきくうえ、サービス精神も知識も豊富なスタッフがいれば、その時々で
最適なルートや上陸地を選び、思いっきり探検気分を盛り上げてくれます。

アデリーやジェンツー、ヒゲペンギンの営巣地では、かわいいペンギンたちに目が釘付けに。
一方で驚いたのは、それまで映像や写真ではあまり目にすることのなかったたくさんの死骸。
生と死が普通に隣り合わせにある現実は、当たり前とはいえ衝撃を受けました。

そして、最高にロマンチックだったのがニューマイヤー海峡。
氷河に囲まれた入り江に入ってエンジンを止めると、一瞬にして時が止まってしまったかのような静寂。
でも、耳を澄ますとパチパチ、パチパチという音が・・・。
海に浮かんでいる氷に閉じ込められていた太古の空気が外にはじけ出る時の音で、山肌に反響しているのだとか。
周囲360度から奏でられる神秘のアイスサウンド、素敵すぎます♪
   
 童心に帰って雪山で滑り台

博物館のポートロックロイを見学

最高に楽しくてスリル満点の雪の滑り台

そのままの形で残るクジラの骨

骨を見守るようにジェンツーのヒナ

海上から見たエスペランサ基地
  
海外の観測基地も訪問。
今は博物館になっているイギリスのポートロックロイでは、お昼寝中のジェンツーペンギンたちを横目に中に入ると、基地時代の生活の様子がそのまま残されていました。
ひと通り見学し、あとは記念品を買ったり、日本への手紙を投函したり。

アルゼンチンのアルミランテ・ブラウン基地では、基地の裏にある小高い山登りにも挑戦。
雪の急斜面を夢中になって歩き続け、頂上にたどり着いたところで振り返ると、クラクラするほどの高さ。
降りるのが怖いなぁと思っていると、スタッフが先に降りながら雪面を固めて天然の滑り台を作ってくれました。
そこを私たちがお尻で滑り降りたのですが、これが予想以上にスピードが出て、転がるわ脱線するわで、
もうワーワーギャーギャー(笑)。
外で遊ぶのがこんなに楽しいと思ったのは子どもの時以来かも。
   
最初に行く予定だったアルゼンチンのエスペランサ基地は、強風で上陸がかなわず残念でした。
   
 氷の世界でクジラと遊ぶ

氷上のヒョウアザラシ。5m以上離れて見学

興奮とあまりに至近距離のためブレてしまったクジラ
   
一番感動したことといえば、パラダイス湾でのゾディアッククルージング。
氷の上ではヒョウアザラシが寝ぼけ眼でこちらを見ているし、ペンギンたちはエサを求めてピョンピョン跳ぶように泳いでいます。
さらに、クジラが数頭やって来て、なんとゾディアックを囲んでグルグル回ったり、下をくぐり抜けたり。
中にはゾディアックよりも大きいものもいて、近くを通る時は波を立てないように気を使ってくれているようでした。
寒さも忘れ、またもやみんなで大はしゃぎ。

大自然は、いい年をした大人を子どもにします!
南極の海に慣れたスタッフもクジラに遊んでもらったのは初めての経験だったようで、まさに奇跡!
信じられないことが次から次へと起こるクルーズなのでした。
   
 南極で温泉!

地表は温かく硫黄の匂い。見たことのないヒトデもいた

これが南極の温泉の正しい入り方??

地球とは思えない光景が広がっている

巨大なドラム缶は何用?右の赤い点が人間
   
さらに活火山のあるデセプション島へ。
クルーが砂浜に即席の露天風呂を掘ってくれました。
南極の温泉の正しい入り方は、まずは写真のように足を高く上げて・・・
というのはウソです。へへ。“デセプション”島ですから。
温度は40度近くあって、皆さんあったかい温泉と冷たい海を行ったり来たり。

近くでペンギンたちが散歩しているかと思えば、目の前の海からいきなりオットセイが巨体を揺すりながら現れ、
まっすぐこちらへ! あわや混浴!!!
こんな露天風呂、地球上のどこを探してもないでしょう。
遠くの山は不思議な地形で、なんだか別の惑星に来てしまったかのような錯覚に陥ります。
そりゃテンションも足も上がりますね(笑)。

また、この島は調査基地や捕鯨基地、南極初の空港もあった場所で、その跡がそのまま残されていました。
   
 アザラシとペンギンが同居

子ペンギンたちのスイミングスクール?

ミナミゾウアザラシのイビキは豪快

氷山がひっくり返ったもの。長く海中に沈んでた部分の表面は独特のデコボコ模様

訪問地や通過ポイントは、船内に貼られたマップ上にその都度書き込まれ、確認できる
   
クルーズ最後は「ここ、ほんとに南極?」という感じの、芝生のように緑が広がったリビングストーン島のとある地点を散策。
羽毛が抜けきらないジェンツーペンギンの子どもたちが、水たまりで泳ぎの練習をしていました。
ミナミゾウアザラシもゴロゴロしていて、なんだか平和です。

11日間のクルーズは、とにかく毎日がサプライズの連続。
そんな中、今もはっきり覚えているのは「この思い出があれば一生生きていける」と思ったこと。
ちょっと大げさに感じるかもしれませんが、南極の自然はそれほど強烈で、豊かかつ謙虚な気持ちにさせてくれたのでした。
本当に宝物の思い出です。

しかし、南極の自然はクセになります。2年後、取材の機会を得て再び南極半島クルーズへ。
ま、一生の思い出は多いに越したことありません(笑)。
   
 おまけ・・・南極半島で出会った平和顔

   
ウェッデルアザラシは寝ている間も見ていて飽きない。
時々「ごぼぼ」と寝言を言ったり、口角を上げて笑っていた。
それってどんな夢?

   
カニクイアザラシも寝ながら笑ってる?
氷のゆりかごが心地いいのか、
ゾディアックで近づいてもまーったく起きる気配なし!

   
ペンギンを食べることから、獰猛なイメージのヒョウアザラシ。
でも顔は意外と愛嬌たっぷりで憎めない感じ。
あ、それが手か!?

   
一見オヤジっぽいけど、まだ子どものミナミゾウアザラシ。
十数頭が密集しているため、寝返りはかなり近所迷惑。

   
デセプション島の温泉で、目の前の海から現れたオットセイ。
カメラを向けたら、ポーズをとって色っぽい目線をおくってきた。
負けた。。。



(k.suzuki)